真珠ができるまで
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母貝、稚貝の仕入れ
長崎県、愛媛県の母貝養殖会社から毎年母貝や稚貝を仕入れています。私達はこの母貝を使って天草の海で真珠養殖を行っています。
挿核(人間でいう手術)ができるまで1~2年かけて健康状態などを管理して丁寧に育てていきます。
毎年少しずつではありますが、養殖する数も増やしていき、より良い真珠を多く作りたいと思っています。
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母貝、稚貝の養殖
母貝や稚貝は種類によって巻き具合や温度の耐性など違いがあり、毎年降水量、海水温度、赤潮など環境の影響によって、貝の成長が遅くなったり早くなったりします。
大きくなるにつれ、カゴの入れ替えや貝殻の表面についたカキ、フジツボ、ボヤといった付着物の除去作業を行い、母貝が住みやすく成長しやすい環境作りが必要です。
この手入れをちゃんとしてあげることで貝は健康で大きく成長していきます。
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母貝の仕立て(挿核準備)
この作業が、美しい真珠つくりの原点となります。挿核という(人間で例えるならば「手術」)作業を控え、なるべくそのショックを少なくするために、オゾンの機械を使用して母貝の生理活動を抑えます。
生理活動を抑える作業が良かった場合は良い真珠ができやすく、悪い場合は良い真珠ができにくいです。
毎年ですがこの作業が中々難しく、毎年違う環境の変化に対応していかなければうまくいきません。
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挿核
あこや貝の身体の中心部にある生殖巣に鋭利なメスを使って道を作り、挿入器で核を所定の場所に送り込みます。
すごく繊細な作業であこや貝の筋肉を切らないように作業し、切り口は一回だけしかつけることができません。
切り口を何回もつけると真珠ができる際に、傷がある真珠ができてしまうからです。
その核に真珠層を巻く仕事をする外套膜の切片(ピースという赤い切片)を接着させます。
うまくいけばこのピースが細胞分裂をはじめ、核を丸く取り込んで、本来の役目である貝殻を形成する真珠層を分泌し始め、これが丸くきれいに巻いていくと、美しい真珠の誕生となります。
外套膜の切片(ピース)にも表と裏があります。
これも大切な作業のひとつで表と裏で真珠の巻きが薄くなったり濃くなったりします。
お店にはきれいな真珠が主に販売されていますが、真ん丸で無傷、色がきれいでテリがあるという真珠は全体の1割程度というのが実際のところです。
「挿入器」「ひっかけ」「メス」「開口器」
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管理作業
挿核作業後、養生、沖出(レントゲンによる透視)などのプロセスを経て、カゴに並べられて水深3m位の穏やかな海中に吊るされ、早ければ7か月、遅ければ1年半後の浜揚げを待ちます。
この間何もしなければ付着物に覆われて貝は死んでしまいます。
そうならないために、定期的に動力噴水機という機械で海水を高圧で吹き付けて汚れ(付着物)を落とす作業を行います。(動噴作業と呼びます)
この動噴作業はただ汚れを落とす作業だけではなく、刺激を与えることで真珠層の分泌を促進したりする効果もあります。
暑い時も寒い時もこの作業は続きます。汚れがひどい場合は、ネットからとりだして手作業で汚れを落としていきます。
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浜揚
真珠と貝柱を取り出す浜揚作業です。毎年12月から1月の寒い時期に行います。
真珠の表面がきめ細かく引き締まるのがこの時期だと言われています。「あこや真珠」独特の干渉色が引き立ちテリがよくなります。
浜揚作業はまず真珠貝を割り、貝肉と貝柱に分けます。貝柱は、歯ごたえもよく珍しい食材で、主に近場の漁協などに出荷します。
その日で取れた貝柱は新鮮で、自分たちは刺身として食べています。またフライ、かき揚げなどいろんな料理の食材としていただけます。
真珠の入った貝肉は「肉砕機」という巨大なミキサーで肉と真珠を分離され、採れた真珠は塩や洗剤できれいに磨かれて選別作業を待ちます。
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選別と販売
巻かなかった核や真珠とは認められない低級珠を除外します。その後、サイズ分けし、キズ・色,形などの品質で細かく分けていきます。
この選別作業はすごく技術がいる作業で、熟練の技術を取得するには何年もかかると言われています。
いろんな真珠の中から一つ一つ種類ごとに分けないといけません。
この選別も入札時の評価に関わってきます。
入札会は、生産者組合である熊本県真珠組合、更に上部組織である全国真珠養殖漁業協同組合連合会を通して取引されます。
稚貝から通算すると3年から4年間かけて作られた真珠が、品質はもちろんですが、相場により評価され取引されます。